ブラックサンタクロース


食べたい。

リョウコを。


今すぐ、ここで。


誰に見つかってもいい。


見たやつ全員殺してXの仕業にしてしまえばいい。


だから

はやく


食べ――――


「あい……」


え?


「……して、る」


“愛してる”なんて


そんな言葉、言われ慣れてる。


『僕もだよ』


って定型文を応えれば、相手を夢中にさせられる。


そんな便利な言葉で。


美味しくいただくために、使う言葉で。


僕にとって人が愛を伝える言葉は

いい餌になるための隠し味(スパイス)でしかないと。


そんな風に、認識していた。


それを、リョウコが、口にした瞬間


ズシンと


心のずっと奥に、響いてきた。

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