いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


私は起き上がり、ハンガーラックにかかった薄手のパーカーを羽織ると印鑑を手に「今開けます」と応えて玄関扉を開けた。

──瞬間、眼前に飛び込んできたのは白色の花束。


「東條様からです」


……東條って、いち君……だよね。

住所、うちの母にでも聞いたのかな。


「こちらにサインをお願いします」


促され、受領印と記載されたスペースに印鑑を押せば、花束が手渡される。

そして、宅配屋さんと入れ替わるように階段を上がってきたのは、隣に住む女性、仁美さんだ。

仁美さんは夜のお仕事をされていて、いつも昼近くになると帰ってくる。


「沙優ちゃん、おはよ」


彼女は、腰の辺りまで伸びている真っ直ぐで綺麗な黒髪を揺らし、微笑んだ。


「おはようございます。お仕事お疲れ様です」

「お疲れさまー。綺麗なお花じゃない。誰かからのプレゼント?」

「プレゼント……だと、思いますけど、誕生日でもないんでちょっとびっくりしてて」


私が戸惑いつつ笑みを浮かべると、仁美さんは私の前で立ち止まる。


「ふふ、そうなんだ。その花、ブーゲンビリアだね」

「知ってるんですか?」

「うん。前にお客さんからもらったことあって、変わった花だから覚えてるよ」


仁美さんの説明を聞いて花を見ると、確かに珍しいと感じた。


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