悲劇のヒロインなんかじゃない。
「こんにちは。樋口薫と申します。青嶋社長にお会いしたいのですが…」


青嶋さんの会社はまだ小さなビルの中にある。


受付とも取れない小さなカウンター。その奥で社員達が顔を輝かせて働いている。やる気が満ちた職場だ。


私が名乗ると何故か、社員の皆さんは複雑そうな顔をしている。招かれざる客ということだろうか。


「お仕事中に申し訳ございません。青嶋社長は奥にいらっしゃるのですか?失礼いたしますね」


一向に私を案内しようとしない社員達をよそに、私は何度かきた社長室に向かった。


「あの!樋口さん、待ってくだ…」


止める声を気にせず、社長室を軽くノックし、失礼かとも思ったが中の返事も聞かずにドアを開けた。


< 3 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop