恩返しは溺甘同居で!?～ハプニングにご注意を!!

　「あのねっ、私！……明後日の木曜日、お休みなの！」

　「え？」

　何の脈略もない私の言葉に、びっくりした顔の修平さんと目が合う。

　「もともと予定も何も無くって時間はいくらでもあるの！だから…」

　ジッと私を見つめたままの修平さんから頑張って目を逸らさずに続けた。

　「頑張って修平さんの好きな料理作るから教えてほしいの！」

　「俺の好きな料理を……？」

　「うんっ！」

　胸の前で握り拳を作って意気込む私を不思議そうに見た彼は、少し間を空けてから、「ああ、そうか…」と呟いた。そして自分の両手で私の両手の握り拳を包むようみこんだ。
　
　「ありがとう、杏奈。」
　
　目を伏せて座っている修平さんの表情は立っている私からは見えない。
　包み込まれた両手が温かくて心地良い。
　でもそんなことにすら慣れない私の頬はすぐに赤くなっていく。

　修平さんが顔を上げた。
　彼の瞳が薄い膜を張った様に揺れている。
　吸い込まれるようにその瞳から目が離せない。
　
　「杏奈にリクエストする料理、考えとくね。」

　そう言って、愛おしいものでも見るかのような眼差しで見つめられると、心の奥にある何かを掴まれたようになって、身動きすらとれない。
　
　黙ったままの私を下から見上げてくる彼の瞳は、瞬く星のようにとても綺麗だった。