恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
次の年、俺は春が来ると段々と気分が落ち込んでいくのを感じていた。
忙しくしていないと、得体のしれない何かに負けてしまいそうで、仕事に打ち込む。次々に仕事を入れて毎日遅くまで職場にいる俺を、周りの同僚や上司たちは気遣うような声を掛けてくれる。
追われるように仕事に打ち込んで疲れて帰宅しても、アンジュの散歩は欠かさず行った。それがたとえ夜中だろうと。
そうして体を酷使してクタクタの状態だったのに、夜なかなか眠りつくことができない。そんな俺を心配したアンジュが、俺の部屋のドアを勝手に開けて入ってくるようになってからは、短い時間だけでも眠りに落ちることが出来るようにはなった。
桜の花の開花と反比例を描いて、気持ちが少しずつ萎んでいく。
祖母の一周忌の前日、つまり俺の二十八の誕生日。
俺はとうとう家に居て庭の葉桜が目に入るのすら辛くて、アンジュを連れて散歩に出たんだった。
河原に立ち止まって、青い葉を繁らせる桜並木を振り仰ぐ。
川面に映る夕陽が目に眩しい。
慌ただしい毎日を過ごす中で、もう大丈夫と思っていたはずの胸がひどく痛んだ。
日が陰ると途端に冷たくなる春風に吹かれて、波立った川面に花びらが揺れている。
「あの、良かったら、これ…」
突如横から小さな手がスッと現れた。 その先には、女性用のハンカチが乗っている。
「え?」
「お節介だったらごめんなさい。でも…」
声の主の方に体を向けようとしたその時、
ポタリ、と頬を滴が滑り落ちる感触に、自分が泣いていることに気付いた。
慌ててそれを拭おうと動かした手の先に、差し出したハンカチを無理やり握らせて、その人は走り去っていく。
拳で涙を拭きながらその後姿を見送った。
頭の上の方で一つに括った髪が、彼女の動きに合わせて左右に振れている。
「なびく髪が、アンジュの尻尾みたいだな。」
彼女の姿が見えなくなった後、手にしているハンカチに目を落とした。
真っ白なそれは、四葉のクローバーと『A』というアルファベッドが緑で刺繍してある。
そっとその刺繍を指でなぞった。
忙しくしていないと、得体のしれない何かに負けてしまいそうで、仕事に打ち込む。次々に仕事を入れて毎日遅くまで職場にいる俺を、周りの同僚や上司たちは気遣うような声を掛けてくれる。
追われるように仕事に打ち込んで疲れて帰宅しても、アンジュの散歩は欠かさず行った。それがたとえ夜中だろうと。
そうして体を酷使してクタクタの状態だったのに、夜なかなか眠りつくことができない。そんな俺を心配したアンジュが、俺の部屋のドアを勝手に開けて入ってくるようになってからは、短い時間だけでも眠りに落ちることが出来るようにはなった。
桜の花の開花と反比例を描いて、気持ちが少しずつ萎んでいく。
祖母の一周忌の前日、つまり俺の二十八の誕生日。
俺はとうとう家に居て庭の葉桜が目に入るのすら辛くて、アンジュを連れて散歩に出たんだった。
河原に立ち止まって、青い葉を繁らせる桜並木を振り仰ぐ。
川面に映る夕陽が目に眩しい。
慌ただしい毎日を過ごす中で、もう大丈夫と思っていたはずの胸がひどく痛んだ。
日が陰ると途端に冷たくなる春風に吹かれて、波立った川面に花びらが揺れている。
「あの、良かったら、これ…」
突如横から小さな手がスッと現れた。 その先には、女性用のハンカチが乗っている。
「え?」
「お節介だったらごめんなさい。でも…」
声の主の方に体を向けようとしたその時、
ポタリ、と頬を滴が滑り落ちる感触に、自分が泣いていることに気付いた。
慌ててそれを拭おうと動かした手の先に、差し出したハンカチを無理やり握らせて、その人は走り去っていく。
拳で涙を拭きながらその後姿を見送った。
頭の上の方で一つに括った髪が、彼女の動きに合わせて左右に振れている。
「なびく髪が、アンジュの尻尾みたいだな。」
彼女の姿が見えなくなった後、手にしているハンカチに目を落とした。
真っ白なそれは、四葉のクローバーと『A』というアルファベッドが緑で刺繍してある。
そっとその刺繍を指でなぞった。