恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!


 午後四時四十分。待ち合わせの時間までまだ二十分もあるというのに、私は修平さんとの待ち合わせの場所に立っていた。 
 アンジュの散歩は午後一番で済ませた。餌も留守番用のタイマー付きフードトレイにセットしてきたし、お水もたっぷり補充した。
 修平さんは駅まで来る時はタクシーを使うようにと、お金を置いて行ってくれたけど、思っていたより早く準備が済んだ私は、近くのバス停からバスに乗って駅までやって来たのだ。それでも随分と時間が余ったので、駅に隣接するショッピングビルを見て回っていた。

 おかげで、良いもの買えて良かった。

 手に持ったベージュのバッグの中に忍ばせたそれを思い浮かべると、自然と頬が緩んだ。

 「いいことでもあったの?」

 頭の上から聞きなれた声が降ってきて、慌てて顔を上げると、すぐ目の前に修平さんが立っていた。
 
 「しゅ、修平さん!」

 「随分早かったね、杏奈。」

 優しい瞳で私を見下ろす彼の距離がいつもより近い。まるで私を誰かから隠そうとしているみたいに。
 壁になった彼の向こう側に、通りすがりに振り向く女の子達の姿が映った。それも一人だけじゃなくて、何人もの女性が振り向く。

 多くの女性たちの視線を釘付けにしている、目の前の彼を見た。
 薄いブルーのボタンダウンのシャツに、光沢のある紺地に金色のストライプのネクタイを締めている。朝家を出る時には腕に掛けていたジャケットを、今はきっちりと前を留めて着ていて、グレーのパンツはセンタープレスもピッチリと入っていて、スラリと伸びた長い脚がより長く見える。
 仕事と病院を済ませて来たようにはとても思えないほどの爽やかさの上に、働く男性の色気のようなものを感じて、私の心臓は早速忙しなくなっていく。
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