恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 一人暮らしを一年以上やってると、家の中での独り言はすっかり当たり前になったな、と最近気づいた。

 「犬か猫でも飼えたらいいんだけどなぁ」

 同じ返事が返ってこない状況でも、温かい小さな生き物が同じ部屋に居れば随分と癒されるだろうなぁ、と思いながら最後のパンを急いでコーヒーと流し込んだ。

 残念ながら今の安月給ではペット可の物件には引っ越せないし、万一お金があったとしても今は自分一人の世話で精いっぱいだな~、と自分の余裕のなさにしょんぼりする。


 そんなことをのんきに考えていたら、テレビの中は天気予報から最後の星座占いに変わっていた。

 「やだっ!もうこんな時間!!」

 星座占いを見ながらバタバタと食器を下げ、洗面台に行き身支度をする。
 リビングに付けたままにしているテレビでは、女性アナウンサーの涼やかな声が各星座の運勢を告げていた。
 
 鏡に映る見慣れた自分の平凡な顔を見ながら、耳だけはリビングから聞こえる星座占いに耳をそばだてる。
 いつもの薄いお化粧をさっと済ませて、肩の下まで伸ばした髪を束ねようとブラシを手に取った。
 
 
 『今日の最下位は、ごめんなさい、ふたご座のあなた。思わぬハプニングに困らされそうです。ラッキーアイテムは時代小説です。では、みなさん今日も元気にいってらっしゃい~。』


 私は思わず、ブラシを持ったまま固まった。
 だってもうすでに朝からプチハプニングを二連続で食らってる。
 しかもラッキーアイテムは私の大好きな時代小説…。

 「いやいや、ただの占いだしね…」

 なんとなく気にはなったけれど、時間に追われていたので急いで身支度を済ませて家を後にした。
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