恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 



 ゆうべのやり取りを思い返しながら、サラサラとした彼女の髪を撫でる手を止めることが出来ない。
 アンジュの手触りに良く似てるな、と思って口元が自然と弧を描く。

 寝ぼけた頭が段々とはっきりしてくると共に、自分の状況が把握できる。
 捻挫した足首には、すでにぬるくなった保冷剤がタオルで巻かれていた。
 枕元にはハンドタオルが落ちていて、彼女の足元に水を張ったボールが置いてあった。

 そうだ、ゆうべの夜中、足の痛みで目を覚ましたんだけど、少しでも動かすと激しい痛みに襲われて、ベッドから動けずにいたんだ。痛みに耐えているうちに意識が遠くなっていったような気がする。
 熱くなった額をひんやりとした何かが撫でていたような、そんな夢を見ていた。

 あれは夢じゃなくて、彼女が汗を拭いてくれていたのか、と気付いた。

 自分が少しでも触れると、彼女は毎回顔を赤くして動揺するのが伝わってくる。
 きっと、異性との触れ合いに慣れていないんだろうな、と察せられる。
 その彼女が自分から俺に近づいてくれたのが、なんだか嬉しい。
 きっと、俺の世話をしながらそのまま寝てしまったのだろう姿に、心がポッと温かくなった。

 ベッドに片頬を着けて気持ち良さそうに寝ている彼女の、その顔にかかる髪をそっと耳に掛けた。

 「ん、ん~~」

 くすぐったかったのか彼女は少し声を出しながら身じろぎをした。

 ああ、これ以上眺めているのは良くないな。

 そう思って、彼女の肩をトントン、と叩いた。

 「んん……あ、……」

 ゆっくりと瞼を開けた瞳の中に、俺の顔が写り込んだ。

 綺麗だな、と無意識に顔を寄せたその瞬間。

 「きゃ~~~~~!!!」

 と叫びながら彼女は飛び上がるように体をのけ反らせて、そのまま後ろにドスンと尻もちをついた。

 




< 36 / 283 >

この作品をシェア

pagetop