恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 アンジュの足の向くに任せて道を下って行くと、急に住宅街が終わり目の前が拓けた。

 「こ、ここは!」

 住宅街を抜けたその先は河川敷だった。
 そう、いつも私が通勤している桜並木の河川敷。
 その桜並木を今はちょうど対岸から見ていた。

 「こんな所に出るんだ…」

 向こう岸の桜が川面に映って美しい。
 朝の風に吹かれた花びらがハラハラと水面に落ちていく。
 朝陽が水面に反射して桜を照らしていた。
 
 目の前の光景があまりに美しく神秘的で、私はその場に足を止めてそれを見入ってしまった。
 
 どれくらいその場に足を止めていたのだろう。
 突然、右手のリードがぐいっと引っ張られた。

 「あ、アンジュ……」

 右側を見下ろすと、アンジュが「もういいかな?」と言うような瞳で私を見上げている。

 「ご、ごめんね。お散歩続けよう。」

 私がそう言って足を一歩踏み出すと、アンジュも前を向いて歩道を進み始めた。

 
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