恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
千紗子さんと別れて喫茶店を出た私は、自転車を漕いで帰宅を急いだ。
春の日暮れは早い。少し前に比べて日が長くなったとは感じるけど、もう夜の帳が降りようとしている。
「急いで帰ってアンジュのお散歩に行かなきゃ…」
自転車をフル回転で漕ぎながら、一人ごちた。
橋を渡って、住宅地の入口に辿り着く。ここからは緩やかな坂道になっているので、私は気合を入れてペダルを踏み込んだ。
その時後ろから一台の車が私を追い越そうとしていたので、一旦端に寄ってやり過ごすことにする。
止まった私の隣をゆっくりと徐行して抜いて行く車に既視感がわく。
黒い車体の左ハンドルの車。
高級外車と言われるそのエンブレムを数日内に私は見ていた。
運転しているのは女性だった。肩先で綺麗に切りそろえた髪が知的そうな感じの。
同じような車なんて、いくらでもいるじゃない…
ここは高級住宅街なんだし。
車の細かい種類なんて分からない私はそう結論付けて、坂道を上るべく再びペダルを踏み込んだ。