借金のカタなのに溺愛されてます?
もう一度ボールペンを手に取ると紙を眺めた
人生の一大事がこんなに薄い紙なのかと役所へ向けてため息を溢す
ボールペンを握り直すと妻となる人の欄を埋めていく
・・・本籍ってどこだっけ?
迷うペン先を誘導するように
住民票が広げられた
書き終えると
部下の男が印を押す
・・・私の判子
・・・百均にも売ってるか
少し呆れて、少し笑えて
複雑な気持ちが涙に変わる
「さぁ、これで陽菜ちゃんは
今から碧斗の奥さんだから」
死刑宣告のように響いた声
それと同時に
警護のように配置されていた部下達が
部屋の外へ出て行った
そして・・・
「じゃあ碧斗、これは
俺が預かって出しとくから」
なんとなく味方の気がしていた
一平さんまでもが
婚姻届をヒラヒラさせながら部屋を出ていった