借金のカタなのに溺愛されてます?

side 碧斗





腕の中で寝息を立てる陽菜を
見ているだけで胸に温かさが広がる


寝顔を見ながら思い出したのは

胸糞悪い陽菜の両親のことだった

陽菜がカタにされた借金は
元々この西の街に暮らす父親が
教職であることを隠すために
態々東の街まで行って作ったギャンブルのツケだった

龍神会が治めるシマは拠点のある西

東は白夜会が治めている

本来なら白夜会一ノ組堂本組が握っていた借金

あちらの若頭である堂本理樹が
『買い取って欲しい案件がある』
と連絡してきたことで

結局のところ龍神会《うち》が買い取ることにしたもの

余程の事情がない限り
借金の買取なんて無茶なことはしない

それなのに
二つ返事で買い取ったのには
訳があった・・・

それは・・・
陽菜の存在

東の白夜会は北の街
西の龍神会は南の街

四方に開ける街を二分支配するようになったのは
四代前からだと聞き覚えがある

東西に分かれての不可侵領域は

現在も進行中で
互いの関係は良好だと思う

同い年の堂本理樹とは
何度も交流したこともある仲で

四年前にあった理樹の結婚披露の席へは友人として出席をした程

あの時、理樹の相手を見て
“欲しい”と胸がザワついた

そんな僅かな俺の変化を
アンテナの高い理樹の側近に気付かれた

若頭同志、趣味思考も好みもよく似ていると揶揄られ
酌を受けながら苦笑いしたことを覚えている

あれから四年経ったのに
迷いなく写真と話を持ってきた食えない男


勿論、断る理由は無かった


それが・・・例え三億だったとしてもだ










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