借金のカタなのに溺愛されてます?

着いた所は
・・・ここも武家屋敷?

そう思える程大きなお屋敷だった


碧斗さんに肩を抱かれ
長い廊下を歩くと両側に控える組員さんが頭を下げる

やがて、その廊下の中程で止まると
サッと襖が開かれた




「おぉ来たか」


「じじぃ、急かしやがって」



部屋の中から聞こえた声は
碧斗さんのお爺様で
龍神会会長の大澤翠龍《おおさわすいりゅう》さん


「おぉ、陽菜ちゃんか
 よく来てくれたな
 これは家内の橙美《とうみ》だ」


弟さん以外で初めて会う碧斗さんの家族に緊張しながらも


「はじめまして陽菜と申します
 よろしくお願い致します」


せめてきちんとお辞儀をして
ご挨拶をと思う気持ちは

肩を抱いたまま離して貰えそうにない碧斗さんの腕の力に負けた


「碧斗、お前どうした?余裕ゼロか」


ククと笑う翠龍さんは
どことなく碧斗さんに似た雰囲気


「碧斗さん、お座りなさい」


お婆様の声に
ようやく腰を下ろした碧斗さんは


小さな声で“大丈夫か”と
私を気遣いながら話に加わった


途中、弟の紅太さんと一平さんが混ざり
事務所での出来事をバラされ

「理不尽ね」と
碧斗さんはお婆様に叱られた


・・・もしかして天敵?


碧斗さんの弱点を見つけた気がして
少し嬉しくなった


それに気を良くした紅太さんは


「おばぁちゃん、兄貴ったら
 多分陽菜ちゃんと俺を会わせたくなくて南に行かせたんだよ?酷くない?」


「紅太さん、そこはあくまでもあなたの為よ?
 でも半年って長いわよね」

碧斗さんの顔を見ながら
お婆様が笑うと


「ったく、辛抱を学べ」


碧斗さんはプイとそっぽ向いた


裏の世界を嫌って
破門追放されたご両親

組の為にこの世界に残った2人

どんな闇があるのか
想像もつかないけれど

なんとなく自分と似ているような気がする

そして・・・
そこを気遣ってくれる碧斗さんは

とても優しい人なんだと思った





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