借金のカタなのに溺愛されてます?


ボンヤリ目を覚ますと
間近でこちらを射抜くように見つめる双眸があった


「陽菜!」


「あ・・・おと、さん?」


何故か白壁の部屋に寝かされている


「一平!木村を呼べ」


更に碧斗さんは凄く焦っていて
周りがバタバタと騒がしくなる


握られた手にチュッと口付けした碧斗さんは
今度は「陽菜」と名前を呼んで微笑みながら潤む瞳を向けてくれた


「えっと・・・」


誘拐されて・・・叩かれて・・・
碧斗さんが助けに来てくれて・・・

どうしたんだっけ?

思い出そうとする私に


「思い出さなくていい」


碧斗さんが間近で微笑んでくれるから

肩の力が抜けたのか
ジワリと涙が溜まってきた


そんな私の少しの変化に気付いてくれる碧斗さんは


「大丈夫か陽菜、どっか痛いのか」


途端に大騒ぎするから


「碧斗さん」
慌てて手を握り返した


「目を覚ましたか」


白衣を着た院長が現れると
精神的なものとのことで
今夜様子をみて明日退院と説明を受けた


それなのに


「こんな所に陽菜を置いておけない」


碧斗さんの一言で点滴が終わるのを待って屋敷に戻ることになった


「陽菜ちゃんが目を覚まさないって
 碧斗ったらそりゃもう凄い剣幕でさ
 俺なんか鳩尾に蹴りまで食らったし」


私が倒れてからの様子を
いつものように軽く話す一平さんの声に聞き入っていると


「陽菜、こんな奴の話なんて聞かなくていい」


益々猟奇的で理不尽になる碧斗さんに
苦笑いしか返せなかった








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