溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「こんなことをされたら、八神さんをもっと信じられなくなります」
「……わかったよ。でも、俺のお願いもひとつ聞いてほしい」
「なんですか?」
「俺のために、これ以上は痩せないでほしい」

 以前の最低最悪の冷酷な彼とは大違いだ。
 先日、見合いや同棲に至った経緯を白状して以来、彼は私をとことん甘やかしたり、妙に妬いたりする。


「んっ」

 そして、隙あらば頬や首にキスをしてきて、私が戸惑うのを楽しんでいるようだ。


「八神さんは、どうして私なんかを構うんですか?」

 どこにでもいるような容姿で、秀でたスキルもなく、会社でも裏では地味と叩かれがちな総務部にいて。
 スタイルも人並みだし、自分のチャームポイントもいまいち分かっていない。
 料理やお掃除は好きだけど、得意かどうかと言われると自信はないし……。


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