溺れて染まるは彼の色～御曹司とお見合い恋愛～

　どこのＯＬなのか素性はまったく知らないが、少し離れたところから乗客の隙間を上手く縫って、俺に熱い視線を向けてくる。

　交際を希望してくる数多いる女とは違うそのまなざしに、どういう意味があるのか気になって、いつからか彼女の姿を探すようになった。


　興味はない。
　惹かれる華やかさもなければ、服装だってちょっとダサい。
　だけど、気づけば人の良さを知るようになっていた。

　困っている乗客がいれば率先して声をかけ、赤ちゃんが泣きだせば周りが迷惑そうに顔をしかめる中、にこにこと微笑んで母親を助けたりしていた。

　小柄で目立たないタイプの彼女は、心優しい女性。見ているこっちまで微笑ましい気分になるから不思議だった。