溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 Stationiaは、国内外でも名の通った文具メーカー。
 オフィス向けの商品から、こだわりのあるユーザー向けの高級品まであらゆるものを手掛けている。
 私は、幼い頃から文房具が好きで、気に入ったものを収集するのが趣味だった。それは大人になってからも変わらず、新製品と聞けば必ず試してみるし、バラエティショップの文具コーナーに行ったら、三時間は余裕で過ごせるほどの“文具マニア”と自負している。


 一方、憧れの彼の勤務先である八神グループは、服飾業界を牛耳っている最大手の企業。国内外のブランドを傘下に置き、ファストファッションからハイブランド、和装全般やウェディングドレスまでと手広く扱っている。
 どうして彼が、その業界に身を置いているのかはもちろん知らないけれど、洋服が好きなのは間違いないだろう。


「部長、お子さん向けのドリンクをお持ちしました」

 奈緒美が部長に気を利かせている間、私は隣の特別観覧席にいる彼を見つめる。


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