<茜色の笑顔>
〜無表情〜

彼女は、

店のすみのイスに座って、

マンガを読みはじめた。

そのマンガは

最近流行っているギャグ漫画で、

俺も最近読んだ。

ものすごくおもしろくて、

頬が痛くなるほど笑った。

彼女も笑うだろうかと見ていると、

「なんなの、さっきから」

不機嫌そうに、

いや、無表情で彼女は言った。

「いや、その漫画面白いよね。俺もこの前見て」

「うん。すごく面白い」

え、全然おもしろそうじゃないじゃん。

むしろ、

おもしろくないって顔してる。

と思う。

もしかして、

この子笑えないなんてことないよな。

「私、笑えないの」

びっくりした。

俺の心の声が聞こえたのだろうか。

「笑おうと思っても笑えないの」

「笑えないなんて事ありえないだろ」

「じゃあ、笑わせてみてよ」

急に笑わせろと言われても
どうしていいのか分からない。

とりあえず、変な顔。

より目で口をつきだした。

「・・・。」

やばいなんか自分でやってて恥ずかしい。

「変な顔だね」

「どう?おもしろい?」

「うん。」

でも、

笑えないんだ。

なんか俺、情けない。

人を笑わせるってこんなに難しいっけ?
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