そのなみだに、ふれさせて。



「だから麻生さんに色々冷たく当たっちゃったんだよねー。

ごめんね、あたしたちの勝手な勘違いで」



……本当に、"勘違い"なんて、どうしようもないものだ。

このまま誤解が解けていなかったら、この先もこの子たちはわたしに鋭い視線を浴びせてきていたんだろうと思うだけで、素直に許せる気にはなれなかった。



中学のときから、ずっとそう。

だけど人目が苦手なわたしにとって、この場での返事なんてただひとつ。



「ううん、全然いいよ」



笑って嘘をつけば、いつの間にか誰も嘘だとは思わなくなる。

笑顔の下に隠した嘘。……そうやって、どれが嘘だったのかなんて、自分ですらわからなくなる。



「ってか、今日の葛西先輩超絶かっこよくなかった?

麻生さんのこと超絶大事にしてるって感じで」



ねー、と。

女の子たちは言うけれど。わたしが会長のことを好きだと言えば、この子達はまたわたしを敵視するんだろう。




……そんな自爆するような発言、絶対しないけど。



「麻生さんって葛西先輩のこと好きだったの?」



「そういうわけじゃないんだけど……

紫逢先輩から切り出してくれた、っていうか……」



「紫逢先輩だって……! かわいーっ」



ぎゅっと。抱きしめられて、ぱちぱちと瞬いた。

……っ、ほんとに態度の切り替えが早すぎる!



「瑠璃ちゃん」



名前を呼ばれて、振り返る。

そこにいたのはなるせくんで、彼はくすくすと楽しげに笑ってる。……っ、そうだ今朝、なるせくんのことあのまま放置しちゃったんだ!



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