Miseria ~幸せな悲劇~

詩依はメイの言葉を聞いて、ブラウスのボタンに手をかけた。


「ええ、その通りよ……」


詩依はゆっくりとボタンを外していく。その下から彼女の白い肌が見えた。


「……子供の頃からずっと…………これが当たり前だと思っていた。二人だってそうでしょ……?」


詩依の腹部には、青々と刻まれた手術の痕があった。


「まさか……詩依、それって……」


祐希は絶句したように言葉を失った。どうやら彼女も気づいてしまったようだ。


詩依の抱える心臓の病。肌に刻まれた生々しい傷痕。縫い目の大きさと傷の痛々しさから、彼女が今までどれだけ苦しみながらこの病と戦ってきたのかが見てとれた。
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