君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
いまから外に出て先輩を探し、手紙を押し付け……じゃなく、手渡す。そこから今度は練習着に着替えて剣道場へダッシュ。20分で果たして間に合うだろうか。
「っていうか、奥寺先輩ってどんな人? バイオリンが超上手いんだっけ?」
「コンクールで賞とったって、去年全校集会で紹介されてただろ」
「そんなん覚えてるわけないじゃん。ほぼ寝てるんだから」
「立ちながら寝るなよ。器用な奴だな。どっかの国とのハーフで、名前は奥寺・カーライル・ハルトだったか? 日本人ぽくない顔だから、見たらすぐわかんじゃね? ……あ。なら俺もう部活行っていいだろ」
思いついた、とばかりに深月が足を止めそうになったので、慌ててその腕を引っ張った。
ここで置いていかれると心許ない。奥寺先輩を見分けられるかってことより、部活に送れた時の道連れがほしい。
なんて言ったら本気で殴られそうだ。
「ダメに決まってんじゃん! 責任もって最後まで付き合いなさいよ!」
「俺になんの責任があるって言うんだよ!」
「いいからもうちょっとだけ! お願いします深月さま!」
「勘弁しろよ……あ」
突然踏ん張るようにして、深月が立ち止まった。