君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
声をかけなくちゃ。そう思ったけど、喉が張りついたように言葉は出てこない。
その時強い風が校舎裏に吹き込み、あたしの手の中のものを奪っていった。
ひらりと舞い上がり、滑るように湿った地面に落下したそれは、智花から預かった手紙。
慌てて拾って顔を上げた時、優ちゃんたちは廊下を渡り切り、校舎の中に入っていくところだった。
消えて行ったふたり。白い、残像だけをそこに置いて。
強くなってきた五月雨は、あたしの肩や頬を冷たく濡らし、
汚れた手紙とひっそりと校舎裏に咲く紫陽花を、淡く滲ませながら降り続いていた。
「ごめん、智花。優ちゃん、女の先輩といて……手紙、受け取ってもらえなかった」
その日の夜、智花の部屋で汚れてしまった手紙を差し出しながら、あたしはそう言った。
泥を吸い込み、変わり果ててしまった手紙を見た時の、智花の表情が忘れられない。
智花はあの時一体、何を考えただろう。
あたしは詳しく語らなかった。優ちゃんの態度や、女の先輩について。手紙が汚れていることも、何も。
それも余計に智花の想像を、悪い方へと駆り立てたかもしれない。
智花は手紙を引き取らなかった。
捨ててほしいと言われ、あたしはそれを自分の机の引き出しに押し込み、封印した。
あたしの罪はあの日からずっと、引き出しの奥に眠り続けている。
◇