君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


声をかけなくちゃ。そう思ったけど、喉が張りついたように言葉は出てこない。


その時強い風が校舎裏に吹き込み、あたしの手の中のものを奪っていった。

ひらりと舞い上がり、滑るように湿った地面に落下したそれは、智花から預かった手紙。


慌てて拾って顔を上げた時、優ちゃんたちは廊下を渡り切り、校舎の中に入っていくところだった。

消えて行ったふたり。白い、残像だけをそこに置いて。


強くなってきた五月雨は、あたしの肩や頬を冷たく濡らし、

汚れた手紙とひっそりと校舎裏に咲く紫陽花を、淡く滲ませながら降り続いていた。





「ごめん、智花。優ちゃん、女の先輩といて……手紙、受け取ってもらえなかった」



その日の夜、智花の部屋で汚れてしまった手紙を差し出しながら、あたしはそう言った。

泥を吸い込み、変わり果ててしまった手紙を見た時の、智花の表情が忘れられない。


智花はあの時一体、何を考えただろう。

あたしは詳しく語らなかった。優ちゃんの態度や、女の先輩について。手紙が汚れていることも、何も。

それも余計に智花の想像を、悪い方へと駆り立てたかもしれない。


智花は手紙を引き取らなかった。

捨ててほしいと言われ、あたしはそれを自分の机の引き出しに押し込み、封印した。



あたしの罪はあの日からずっと、引き出しの奥に眠り続けている。





< 208 / 333 >

この作品をシェア

pagetop