君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

はためく禁色





甲高いかけ声とほぼ同時に竹刀のぶつかる音が上がる。

あたしは肩を強張らせながら目の前のコートを見つめていた。


でも試合中の選手の動きをただ目に映しているだけで、その内容はちっとも頭に入ってこない。

どちらが勝つかでもなく、ただいつ終わるかと。もう次の瞬間には終わるのかと。

面の下で歯をカタカタ鳴らし、震える手で竹刀を握りながらその時を待っている。


つまり、どうしようもなく緊張していた。

試合まえはいつだって緊張してるけど、いまはその比じゃない。


いますぐこの場から逃げ出したいくらい、緊張がマックスに達している。

すぐ横に補助で入ってくれた1年生の後輩がいるけど、遠慮してか声もかけてこない。

あまりにもあたしが震えていて、どんな言葉をかけていいかもわからないのかもしれなかった。


性別はちがうけど、先輩として情けない。

でもどうがんばっても、この全身の震えを抑えることが出来そうになかった。


目の前で行われてるのは県大会3位決定戦。

さっきあたしと対戦した相手が戦っている。


準決勝は危なかった。ギリギリだった。お互いなかなか有効打突がとれなくて、あとはどれだけ攻められるかにかかってた。

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