君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「うん。ありがとう、歩。よろしくね!」
「はあっ? いや、待って! あたしはOKしたわけじゃないからね!?」
慌てて首を振るあたしに、千里が傷ついた顔をする。
断られるなんて予想もしてなかったって顔だ。
ほんと……勘弁してよ。
「ダメなの……?」
「あー、いや、うん。ダメっていうか、ね? ほら、あたしその、越智くん? て人のこと全然知らないし」
山岡先輩のことも知らなかったけど。
加奈子の話でしか知らなくて、顔もあの時わかったくらいだ。
千里は急に輝かせた顔をぐいっと近づけてきた。
「いっつも話してるじゃん。サッカー部の越智くん! すっごくサッカー上手くて、推薦で入ったんだよ。元々才能があるんだろうけど、でもちゃんと努力する人で、毎日いちばん遅くまで練習してるんだから。見た目ちょっと遊んでるっぽいんだけど、実際はそんなことなくてね。びっくりするくらい真面目なの。あたし中学一緒だったんだけど、でも友だちっていう感じじゃなくて。まあ挨拶くらいはするんだけど、それだけっていうか。でもいまさら仲良くするのも難しくて。サッカーが大事だから彼女とか考えてないって話は聞いてるし、あたしも彼を応援したい気持ちもあるんだけど! でもなんか、サッカー部のマネージャーが越智くんのこと狙ってるって噂があって、それ知って居ても立ってもいられなくなって……」