過去と向き合うという事
「俺、オーナーに拾われて、一時期オーナーの家に住んでいたんですけど、オーナーがあんな酷い人とは思いませんでした」

「何があったの?」

将の話によると、将があたしを見つけてくれた時、叔父にウォークインであたしが倒れていた事を言ったのだが、心配する素振りが見当たらず、自宅に連れてきたのだと言う。

「…無理もないよ。
だってあたしは…」

傷害事件を起こしたのだから。

そんな事、言えるわけがないけれど。

「大丈夫っすか?
友梨さん、顔色が悪いっすね。
もう少し横になってて下さい」

本当は、あたしが言いかけた事が気になるだろうに、将は聞かずにいてくれた。

その優しさが嬉しくて、思わず涙が流れた。

「嬉し涙だから」

「俺、友梨さんが気になります」

「…気にしちゃいけないよ、あたしの事なんか」

傷害事件を起こした女よりも、将にはもっといい人がいる。

「なんで友梨さんはダメなんですか?」

「…本当の事を知ったら、あたしの事なんて嫌いになるよ」

「なんでさっきからネガティヴなんすか!
教えて下さいよ、友梨さんの事」

将の真っ直ぐな視線に負け、あたしはポツリポツリと将に全てを話した。
< 14 / 28 >

この作品をシェア

pagetop