桃色吐息
21
「あ、いらっしゃーい。今ピザ頼んだとこなんだけど、食べるよね?」

蓮はやたら元気に冷蔵庫を開けて、勝手に色々飲んでる。お酒はあらかじめ置いてなかったからいいけど。

いつもはべべさんのスイートルームに泊まってたけど、今年は普通のツインの部屋だったから、なんか狭いなって思ったら、奥の方にビトとアキラ君も居て、何だかちょっと気まずくなった。


何で先に言ってくれないんだろうな、居るってわかってたら来ないのに。


エイジ君は気にしてないのか、ずっとビトと話していて私はどうしたらいいのかわからなくてずっとカオリさんの隣から離れられない。


「蓮、きてるならきてるって教えてよ・・・」

アキラ君が居てカオリさんも緊張しているのか、蓮に小声でそんな風に言ってるけど、蓮は全然気にしてないっぽい。

ホントこういうとき、空気読まないっていうかなんていうか・・・

「いいじゃん別に、今日ずっと一緒にいたんだし、ビトが桃に話があるんだってさ。2人で会うよりいいでしょ。」



そんな風に話していると、ビトが私のところまで来て、隣に座った。
エイジ君の方をチラッと見ると、大丈夫だって言うように笑っている。



「桃ちゃん、さっきはゴメンね。ちゃんと話せなかったからちゃんと謝りたくてさ。」


いつもならこういう時、さりげなく手でも握っていただろうに、今日はそんなこともなくてお互い触れることも無くて、なんだかぎこちなくて変な気分。



「大丈夫だよ、いつものことだし。もうライブとかこないからそういうこともなくなるでしょ?」


そういって笑いかけると、ビトはとても複雑な顔をして溜息をついた。



「さっき泣いてたじゃない、エイジの前では。辛かったらちゃんといってよ、僕にだって責任があるんだから、ちゃんと言って欲しかったよ。
でもさ、そうさせてたのは僕の方だよね・・・」


そういえば、ビトの前で泣けなくなったのはいつ頃だったろう。前はよくわがまま言って困らせてずっと一生懸命なだめてくれたこともあったななんてぼんやりと思い出す。
あの頃は子供だったから。



「あれは、ビトのファンの子にどうこうされたから悲しかったんじゃないよ、別のことだよ。」

もうそういうことで悲しいなんて気持ちはなくなっていた、またかってあきらめていたんだなきっと。
そういうことって慣れてしまうとどうって事ないのかもしれない。

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