桃色吐息
一人でビトの住むマンションまで向かう。

いつも行っている所だからなれたものだけど、こんなに遅い時間に行ったのは、子供のとき以来かも?

入り口でインターフォンを押すと、ビトがすぐ対応してくれて、セキュリティの厳しい入り口もすぐに入れる。

最上階まで上り、彼の住む部屋まで向かうと、ドアの前ですぐビトが待っていてくれた。


「いらっしゃい、きてくれてありがとう、ゴメンネこんな遅くに。」

そしてビトは、優しく玄関でハグをしてくれて、リビングに招き入れてくれる。



「なにかあった?」

こんなことは初めてで、ちょっと戸惑っていた。
何時もここに来るときは、ちゃんと事前に約束してきていたから。



「今日はパパもママも仕事で帰ってこないから、急に桃ちゃんに会いたくなっちゃって。」

ビトはそんな風に言って、私の顔をチラッと見て、ちょっと頬を赤らめた。

そういうところは、昔っから変わらないなって思う、いつまでも新鮮に私を愛してくれているって思う。必要にされているんだなって実感する。


「何か作ろうか?おなか空いてない?」

勝手知ったるキッチンに向かおうとすると、もう食事してきたからと、そのまま私をリビングのソファーに座らせてくれて、お茶の用意をいそいそとしてくれていた。



「さっきまでエイジと一緒に居たんだよ、ちょっと食べてきたから大丈夫。」


え?

いきなりエイジ君の名前を出されて、なんだか胸が痛くなった。
別にたまにメールをしているだけなのに、なんだか少しの罪悪感があったから。


「何はなしてたの?」

そんな風にきくと、秘密だよなんていって教えてくれなかった。



「ねえ、たまには一緒に映画でも見ない?」

そういってビトが出してきたのは、昔のラブコメディ映画だった。

ラブアクチュアリー
イギリスのオムニバス映画だ。

色々な愛の形、それは男女のものだけではなくて、友情であったり、親子の絆であったり、うまくいかないことや、偶然がかななってハッピーエンドになったり、言葉が通じなくても通じ合うモノがあったり・・・


ビトは私の肩を抱きながら、映画のワンシーンに合わせてAll You Need Is Loveを歌う。
それが、彼のお母さんであるBabyさんの歌声に似て、とても素敵だった。



愛こそすべて・・・



私たちのそれは、どうなんだろうか?
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