桃色吐息
10
あれからほぼ毎日、エイジ君は放課後迎えに来てくれた。

水曜日だけはバイトがあるとかいってこられなかったけれども、それでもなんだか嬉しかった。



彼のこられなかった水曜日は、久しぶりに淑子ちゃんと一緒に帰ることにした。


淑子ちゃんはうちの学校では割と珍しい庶民派の子で、学校は誰の送り迎えもなく、歩いて登下校していた。

目黒線のひとつ行っただけの最寄り駅なので、朝は電車が凄いことになってるので歩いてきちゃってるんだとか。



「桃ちゃん、たまにはお茶して帰ろうよ。」

そういって私たちが向かったのは、武蔵小山商店街にある、ちょっと老舗のパフェの美味しい喫茶店だった。



私はマンゴーのパフェで、淑子ちゃんは定番のフルーツパフェを頼む。

久しぶりだなあ、女の子同士でこうやって遊ぶの。



「そういえば、最近迎えに来てくれてる人が、例の幼馴染なの?」

ビトと別れた事は友達には誰も話していなかったので、そこで初めて別れたことを淑子ちゃんに報告した。


「やっぱりね、いつも会えないってのはダメだよね・・・
エイジ君はお兄ちゃんの友達だよ。」


そうなんだって、淑子ちゃんはパフェを食べながら笑っていった。


「前によく来てた男の人たちは、もう来ないんだ・・・」


急にそんなこと言われるから、そういえばそうだなってぼんやりした。


「もうエイジ君きてくれてるからいいよって言ったんだけど、どうしたの?」


淑子ちゃんはちょっともじもじしながら、その私のファンの人のひとりが、ちょっと気になってる人が居たんだって言った。


「一人、凄く綺麗な顔した男の人が居たんだよ。
ヲタクっぽいのに、凄いキラキラしてたの、桃ちゃん気付かなかった?」


ビトの事務所の先輩に似てたんだって、淑子ちゃんは嬉しそうに話す。


私はビトを見慣れていたからなのか、綺麗な顔の男性には余り反応しなかったのかな?
エイジ君は、綺麗というよりワイルドな感じだもんなあ・・・


「桃ちゃんはかわいくて人気があっていいなあ~」


「そんなことないよ~、淑子ちゃんだって彼氏と仲良ししてるんでしょ?」


うんそうだけどねってぼんやりとしていた。




「あのさ、桃ちゃんはまだだよね?」

なにがって聞き返したら、エッチしたことある?って急に小声できかれた。


この前のビトとのお泊りを一瞬思い出したけど、最後まではしてないのだからってまだだって一応答えると、私この前あったんだよねって話してくれた。



「うちの学校の子って、みんなお嬢様じゃない?
桃ちゃんもそうだけど、ちょっと庶民的なとこあるし、話しやすいんだよね。」

ああうちは、中学まで公立だったしね。


「初めってって、凄い痛いんだよーびっくりしちゃったよ、血が出ちゃうし。」


ええそうなのって、ちょっとびっくりして答えた。


「でもさ、この前貸してもらった漫画とかだと、そんなことなかったよね・・・」

確か幼馴染の年上のお兄ちゃんとの初体験の漫画だったけど。

「あれは、凄くエッチが上手なお兄ちゃんって設定だったからだよきっと、普通は痛いんだって。」


なんだか淑子ちゃんは、大人だなあなんて、そんなことを考えながら彼女の話を聞いて私もパフェを食べる。



「でもあの彼は、大人っぽいよね、きっと上手だよ。年上なんでしょ?」


急にエイジ君のことをそんな風に言われて、一気に恥ずかしくなる。


「違うよ、同じ年だよ。」


私は慌ててそう訂正すると、えーだってお兄ちゃんの友達なんでしょっていうので、蓮は双子なんだって初めて教えてあげた。

なんか、結構お互い色々知らないことがいっぱいあったんだなって思う。


「そっか、大人っぽい人だよね、ちょっとカッコいいし・・・」


そんなことないよって私は何故か必死に否定してしまって、淑子ちゃんになんだか気付かれてしまった。





「桃ちゃんなんか、顔真っ赤だよ。」



彼が好きなんだねえ・・・ってしみじみといわれて、最終的にはうんとうなづいてしまった。
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