桃色吐息
「ねえ、ずっとゲーム見てるだけで楽しいの?」


しばらくしてもそのままなので、私は痺れを切らしてそう言った。


「ああゴメン・・・」

エイジ君はやっと気付いてくれて、私の頭を撫でてくれる。



「お前、勝手に触ってんじゃないよ!」


お父さんが気付いてそんなことを言うから、エイジ君はまた笑って聞き流していた。



なんか、明日からどうするか相談したかったのに、お父さん居たら話せないよなあ・・・
絶対2人きりになったら怒られる。

蓮が居たらどさくさにまぎれて上にいけるのになぁ。



お母さんがお店の方からこっちの様子を心配してチラチラのぞきに来てくれるので、私は助けてと目で訴えていた。


「あ、そうだ桃、ちょっと買い物行ってきてくれない?」

そうやってすぐに気付いてくれてうまい具合にフォローしてくれる。

「じゃあ行ってくる! エイジ君もきて。」

私はエイジ君の制服のすそを引っ張って、急いで買い物に行くことにした。
お父さんが余計な文句を言わないうちに。




「やっとお父さんの呪縛から解かれたわ。」

私はお財布を握り締めながら、エイジ君と商店街を歩いていた。

うちのお店をちょっと離れた頃、エイジ君はさりげなく反対の手を繋いでくれる。



「やっぱ面白いな、お前の父さん。」

思い出しながら笑っている。

「もう、なんか私のこととなると、いちいち色々言ってくるからめんどくさいんだよね・・・」

そう、昔っからそうだったな。私には過保護すぎるんだよ。


「そうだ、何買うかきいたのかよ?」

あわてて出てきたから何も聞いてないのを心配してくれる。

「お母さんが気を使って言っただけだから、なんか適当に買ってくれば大丈夫だよ。」

そういうと、お互い顔を見合わせて笑った。



「そうだ、夏休みどうする?」

やっと話したい事が話せるようになって、嬉しくなって繋いだ手をぶんぶんと振っていた。


「バイトって夏休みはどれぐらい入るの?」

「週5くらいで入るかな?夏休みは忙しいみたいだし。」

「そっか、去年は中学生だからバイトしてなかったよね。いつからバイトやってるんだっけ?」

エイジ君大人っぽいし、ビトはずっと中学も働いてたから、エイジ君もずっと働いてるような錯覚してた。

「高校入ってすぐ位かな?」


そういえば、どういう店で働いてるんだろう?
私は雑誌でチラッとそこの服を見たくらいだ。


「お店行ってみたいなあ・・・」

「来てもいいけど、あんまりレディースは置いてないぜ。」

忙しいと相手してらんないしとも言われて、暇そうな時間なんかも教えてくれる。

これはきっと、行っていいってことだよね。


「じゃあ何時行こうかな?」

夏休みがちょっとだけ楽しみになった。


「あ、明日からバイトだし・・・来れば?」

エイジ君がちょっと照れたようにいうから、私は彼の顔をのぞきこんでそうするって答えた。



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