桃色吐息
17
八月の第一日曜日、私たちは日比谷野音に居た。

今日は蓮も一緒だったから、待ち合わせは現地集合。
珍しく私たちは兄弟そろって出かけた。

「それいいなあ、僕もあの店のTシャツ欲しかったんだよね。」

この間ジュンさんに買ってもらったお気に入りのTシャツを着てきたのを、蓮がずっとうらやましがっていた。

私にしつらえてくれたみたいにジャストサイズのそれは、身体のラインも綺麗にみえるように細めに出来ている。

白地にショッキングピンクの薔薇の花、でもその薔薇はイングリッシュローズで、なんだか見ようによっては牡丹や芍薬にも似ていて好きなんだ。

背中のロゴには、 La Vie en rose 「バラ色の人生」

なんだか浮かれてる自分の気持ちそのものみたいで、ちょっと恥ずかしかったれど。


久しぶりに履いたショートパンツに合わせて、ちょっと暑かったけどニーハイソックスにいつもの白いスニーカー。日差しが強いから、テンガロンハット風の帽子もかぶって。

エイジ君が、絶対スカートはダメだっていうから(ついでに足も出すなって言うから)こんなんになりました。


「それにしても、そのハイソックスなんかエロくない?」

蓮にあとからそう言われて、ちょっと失敗したかなと思う。

あとで合流したカオリさんなんか、思いっきり生足で短パンなのに、全然露出してるみたいに見えないのが不思議だ。

「だって、足出すなって言われたから・・・」

「普通にボーイフレンドデニムとかスキニーとか着て欲しかったんじゃないの、エイジは。せめてレギンス履くとかさぁ…」

「だって、デニムとか長いの暑いんだもん・・・」




待ち合わせ場所の会場の入り口辺りで、エイジ君は一人で待っていた。

いつもと同じ、約束の時間よりまだちょっと早い。


私たちを見つけてちょっと手を振ると、じっと私を凝視したまま固まってしまった。

「お前、何なの。ちゃんと言ったろ。」

やっぱりちょっと怒られる。

「だって、暑いんだもん。なんか変だったかなあ・・・」

そういったら、変じゃないけどって言葉を濁して目をそらしてしまう。

「ただでさえお前目立つんだからさ、もっと地味にしてろよ、こういうところでは。」


「なんかお父さんみたいな事言ってる。」

蓮がそんな様子のエイジ君を見て笑った。

「ほっとけよ・・・そういや蓮の連れはどうした。」

あ、そういえばあと2・3人友達が来るって言ってたような。





「あー!れーん、こっちこっち!」


後ろの方から大きな声で呼ばれて蓮が振り向くと、入り口のちょっと脇の方で、数人でビールを飲みながら座ってる人たちが居た。


私たちはその団体に合流して、初めましてって挨拶をした。

カオリさんの他には、ミヤコさんとナホさんとシンジさん、一通り紹介してもらった。
もうすでに宴会が始まってるっぽい。


「桃ちゃん久しぶりだね、あぁーそっちが噂の彼氏だ。」

カオリさんは相変わらず、人懐っこくて面白い。


「やっぱテツさんそっくりだね~!」

思いっきりNGワードを言われて、エイジ君はちょっと嫌な顔をしたんだけど・・・

「あ、ビール飲む?」
そういわれたので、コロッと態度を変えて、ご機嫌で一緒にエイジ君も飲みだしてしまった。
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