赤と青
めんそ~れ

那覇空港に着いて、到着ゲートを抜けた瞬間、膝から力が抜けた。

”マジか・・・”

大きな水槽の前、カラフルな色の魚達よりもっとカラフルな、怪しさのかたまりのような人物が立っていた。

確かにLINEで、”絶対すぐに判るようにしておく。コンセプトはガイド!”って、言ってたけど、パイナップル柄のアロハシャツは許すにしても、アフロのヅラ、どっから持ってきた!
プラカードに大きく「HARUNA!」って、もう恥ずか死ぬ・・・
って言うか、犬のしっぽみたいに嬉しそうにブンブン手を振るな~

フルサイズのキャリアーをすぐに押しつけてやるつもりだったけど、無理。
目の前を無視して歩み去ろうとする私に、そいつは慌てて追いついてきた。

「ちょ、ちょ、待って!竹山!ハル~ナ、マッテクダサイ!」

ガン無視に焦ったくせに、それでも片言の日本語で、必死にキャラを守ろうとしている。

「なに!そのかっこう!」

私は、会話をしていることがばれないよう、唇を動かさずに、のどの奥から絞り出すような、おどろおどろしい声で訊ねた。もちろんその間もまっすぐ前を見て早足で歩き続けたまま。

「ワタ~シ、ガイドノ、サミュエルデース。サムッテヨンデクダサイ。ドゾ、ヨロシク」

「今やめて!すぐやめて!じゃないと一生口きかない!」

敏感に風向きを感じ取った彼が、トイレで着替えて、私のキャリアーを引き取って歩き出すまでに2分30秒しかかからなかった。

黒の薄手のニットに、スキニーのジーンズ。ラフな格好の時は、ラグビーをやっていたというがっちりした体形が目立つけれど、嫌いじゃない。
ただ、全体にフェミニンな服の選び方や、いかにも仕事できます風の髪型とメガネ(ダテ)で、ゴリラキャラをうまく中和している。
美馬光太郎という名の、このオチャメなオジサマは、私の元上司、それにトモダチ?少なくても彼氏だったことは無いけれど、なんて説明すればいいのだろう。


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