君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
春瀬が去った後しばらくして、

大輝からメールが届いた。

「翼の気持ち伝えた?」

俺は一言だけの返信をした。

「断られた」

ベンチに座り夜空を見上げて

長い溜め息をつく。

春瀬が口にした

「わたしには無理だよ」

その言葉が何を意味するものなのか、

俺は考え、カフェでの春瀬の話を

思い出していた。

実の親から受けた虐待…

それによって失われた足、

背中に出来た火傷の跡…

その事でいじめられて

沢山泣いたこと。

その度に香月に助けられ

守られていたこと。

自分を守るために

香月を巻き込んで

生きてきたこと…

苦しそうな表情で話す、

春瀬の顔は

初めて見た時の表情と同じだった。

「守れるような強い人になりたい」

辛い境遇や経験をしている人間は

世の中には知らないだけで沢山いる。

それを乗り越える事の出来る人間と

そうでない人間がいる。

消えない傷と辛い過去を抱えていても

強くなりたいと願う春瀬は笑っていた。

自分のせいで大切に思う人間を

苦しませるという事が、

春瀬には消えない傷や過去よりも

辛いのだと思った。

それが無理だと

断った理由なんだろうな。

俺を苦しませない為に…

どこまでも優しい…

自分のことより、相手のことを

思う。

出来そうで、出来ないもんだよ。

それを、春瀬はやろうとしてる。

全部1人で、抱えこもうと

必死なのが伝わった。

「おまえは強いよ、春瀬」

俺は、そんな春瀬が好きだ。

誰もいない公園で

俺は夜空を見上げ

ここにはいない春瀬を想った…

春瀬の抱える気持ちごと

俺が抱えるから。

周りがどう思うかなんて

俺には関係ない。

春瀬以外、何もいらないんだ。

春瀬…お前が好きなんだ。

だから、この手を取ってくれるまで

俺は諦めない。

何にも執着しない俺だけど…

春瀬だけは絶対に

諦めたくねぇんだよ。

人生で初めて…

好きになった女の子。

何度だって、言ってやる。

俺は、春瀬が好きだと…










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