君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
桐生くんと箕輪くんを

交互に見て、あたふたする、

わたしをよそに、桐生くんが

口火を切って、話しだした。

「春瀬からも、聞いたと思うけど

俺達、付き合ってるから。

箕輪に入る余地は、一切ねぇ」

無表情のまま、冷静に話す

桐生くんに…

「まぁ、そうだな。

気持ちには応えられないって、

断られたけど…

けど、好きでいるのは自由だろ?」

威圧的に話す、桐生くんに

淡々と話す、箕輪くん。

桐生くんと箕輪くんの間に、

見えない火花が散っているようで…

ど、どどどうしよう!!

「好きでいるのは自由…

それが、春瀬を

困らせるとしてもか?」

桐生くんの言葉に、一瞬だけ

ためらいを見せた、箕輪くん。

「俺にとって、春瀬は

特別なやつで、

悲しませたり、困らせる存在がいる

のは、誰であろうと許せねぇんだよ」

桐生くんの言葉に、わたしの心は

こんな状況でも、ドキドキして、

改めて、好きだと思い知る。

好きという気持ちは、誰かに

言われて、止められるものじゃない

って事は、わたしが1番よく知ってる。

自分自身さえも、誤魔化せない…

「俺の気持ち…迷惑だった?

困らせちゃった?」

切なげに揺れる瞳を向ける

箕輪くんに、わたしは首を振った。

「箕輪くんの気持ちは、

箕輪くんのものだから…

なかった事にして欲しいなんて、

わたしには、言えないけど…

でも…

桐生くんは、わたしにとって

誰よりも特別で、失くしたくない

人だから。

不安にさせたくないの…」

沢山いる人の中から、わたしを

見つけてくれて、抱える全てを

受け止めてくれた人だから…

箕輪くんを見つめて、わたしは

笑った。

「あぁー!そっか…。

桐生より、早く出会いたかったなー」

そう言って笑う、箕輪くんの目元に

光るものが見えたけど、

わたしは、逸らさず受けとめた。

中途半端な優しさは、相手を

傷付けるだけ…

それに、中途半端に声を掛けるのは

桐生くんを不安にさせちゃうから。

「たとえ、

俺より先に出会ってたとしても…

春瀬が好きになるのは、俺だけだ」

わたしを優しく見つめる、

桐生くんに、わたしも笑って応えた。

2人の穏やかな空気を、裂くように

大きな溜め息をついた、箕輪くん。

「おいおい…見せつけんなよ!

俺がいること、忘れて、

イチャつきやがって!」

ぷーっと膨れる、箕輪くんは

幸せにな!と、手をひらひらさせて

去っていった。



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