君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
わたしは夢中で拍手した。

パチパチパチ!!!

そのとき男の子が、こちらに

顔をむけて驚き、固まっている。

っ!!しまったー!!

こっそりのつもりが…

わたしは慌てて拍手の手を止めた。

こっそり盗み見するなんて…

わたしの好奇心のばかー!!

思わず下を向いた。

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

砂を踏む音…

そしてその音が

どんどん大きく聴こえてきて

わたしの前で止まった…

怒られるのかな?

怖いな?

でも盗み見したわたしが悪いし…

うん…そうだ…

ここは素直に謝ろう!

「ご、ご、ごめんなさい!」

思いきり頭を下げた。

すると頭上からクスッと

笑う声がして…

「なんで謝んの?」と聞かれ

わたしはバカ正直に

「こっそり盗み見しちゃったので…」

頭を下げたまま答えた。

「………」

沈黙が痛い…

わたしはあのーとそのーを

繰り返し、言葉をひねりだした。

わたしは思ったままの気持ちを

込めて、男の子を見上げて…

「あなたが飛んだ瞬間…

背中に翼が…きれいな翼が

見えました!

キラキラしてて、

すごかったです、本当に。

空を飛ぶ、鳥みたいで」

「………」

男の子はただじっと、

驚いたような目を、パチパチさせ

わたしを見つめ、固まっている。

そんな男の子を

わたしもジッと見上げていた。

綺麗で端正な顔立な人だなぁ…

わたしは男の子を見上げながら

そんな事を考えていた。

「なんで、お礼?」

男の子は無表情から一変して

柔らかな目で笑う。

飛んだ瞬間の真剣な表情とは違う、

とても穏やかな笑顔に

わたしは胸が熱くなるのを感じた。

っ!!

ドキドキ…ドキドキ…

心臓が口から飛び出そう!

ドキドキする胸をおさえて

わたしは一言だけ…

「すごく…綺麗なものを見れたので!」

「そう、それは良かった」

柔らかな目で、わたしを

見つめる男の子。

心臓がバクバクして壊れそう…

わたしは恥ずかしくなって、

失礼しますと、頭を下げて

くるりと回れ右…

そのとき…

男の子が名前は?と、

声をかけてくれたけど、

わたしは、

聞こえなかったフリをして

義足の足を必死に動かして

全力で来た道を戻った。
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