記憶を失くした少女【完】
でも、戻れない。戻ったらまた萌ちゃんの居場所を奪っちゃうし、汚れた私を見てほしくない。
「………………………帰って」
「…………………………は?」
私の言葉に耳を疑うかのような遥輝の声。
「お願いだから帰って。私は会いたくない」
背を向けて皆に届くように叫ぶ。
「………………………………俺は綺羅がいなきゃ嫌だ」
____ドックン。
やめて。やめて。やめて………………。
「綺羅」
「…………………っ!やっ!!!」
遥輝に腕を触れられた瞬間、あからさまに振り払ってしまった。
呆然とした遥輝の顔。みんなも『え?』とした感じの顔をしている。
きっと拒絶したと思われてしまった。
でも結果的にはいいと思う。これで私を嫌いになってくれる。関わらないでくれる。
「……………………じゃあ」
私はそれだけ言うと、走ってその場を去る。
震える足を必死に動かして。
押し寄せる感情を押し殺して。