記憶を失くした少女【完】



住んでた場所は?

家族は?


そんな事を思い出そうとするたびに頭が痛くなる。


_______ガラッ。


そんなとき病室のドアが開き、中に男の人が1人入ってきた。


黒髪の似合う整った顔の男の人…………………。ベッドの中からでも分かるほど高身長で、恐らく184cmはあるかな?


大人を感じる雰囲気の落ち着いた人だな………って第一印象でそう思った。


その人は私に目を向けるとスゴく驚いた顔をしたと共に、すぐさま駆け寄ってきた。


「…………目が覚めたのか!!??」


「……………え?あ、はい」

スゴい勢いでちょっと怖い……………。


この人は誰?

知り合いだっけ?


「心配したんだぞ…………本当こっちが心臓止まるかと思った………………」


その人は心配そうに、でも安心したように私に向かってそう言った。

「綺羅(きら)が救急車で運ばれたと聞いたとき、頭が真っ白になったんだから………」

話はよく分かんないけど、その人が綺羅って言う人のことをスゴく心配してくれているのは分かった。

「綺羅さんの事大切なんですね。でも、病室間違えてますよ」


失礼な気もするけど私は綺羅って言う人じゃないし、そもそも名前が思い出せない。


私が言った言葉にその人はまた驚いた顔をした。

だけど直ぐに、「エイプリルフールに俺が騙したからって、こうゆうときに仕返しはズルいぞ!」と、冗談っぽく笑って見せた。

……………割と本気なのに。


「というか、あなたは誰なんですか?」

ずっと思っていた疑問をぶつける。


「………………………………………おまえ……」


私が本当にそう言っていることにやっと気づいたのだろうか。

表情が急にあり得ないとでもいったような、不安げな顔に変わった。


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