記憶を失くした少女【完】



少し聞くのは怖い気もする。でも、私が入院したときも変わらずに来てくれてたし、悪い印象じゃないって思いたい。


でも、もし凌馬さんが昔の私じゃなくて記憶をなくした私だからかまっているんだとしたら……………………。


表情が曇っていくのが自分でも分かる。


「凌馬さんは知ってるんだよね?前の私を。あんなにチャラくて男遊びばかりしてるような私をどう思ったの?」


「お前…………」


まるで、『知ったのか?』というような顔。

「学校で耳にした。みんな私のことが嫌いらしいよ……」

自分でその言葉を言うとなんだか悲しくなる。


凌馬さんの顔を見るのが怖くて、下を向いてしまう。


ある程度、皆みたいな言葉が返ってくることを予想していたが、凌馬さんは想像とは違った。


「俺は昔のお前も好きだったよ?元気で明るくて、優しい面もあったし。気が強くて口が悪いとこもあったけど、本当はスゴく弱い子。1人で我慢しちゃうとこがあったから、目が話せないんだよね、俺」


凌馬さんは昔の私のときも、今のように接してくれてたんだ……………。


どんな事をしてようと、変わらずに。


「だから、悩みがあったら俺に言えよ?何だって聞くし、力になる。学校で何があろうと、俺はお前の味方だし、離れていくことはないよ」

そういうと優しく私の頭を撫でる。


暖かい凌馬さんの言葉に涙が出そうになったが、ギリギリで堪えた。



「………………ありがとう!!あぁ、もうお腹空いた!!」


「パエリアもうすぐで出来るから待ってろ」

「うん!」


暗い気持ちを切り替えるように、笑顔で明るく振る舞う。


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