記憶を失くした少女【完】
確かに何もされてないし、変なことをされるような雰囲気でもないが、この間と重なった時点で怖さしかない。
「お願いします…………離して……っ」
「そんなに暴れんなって!」
腕を掴んでる手を振り払おうとしてみたが、中々手は離れてくれない。
『凌馬さん……助けて……!』
声に出来ず心の中で叫ぶ。
凌馬さんしか助けてくれる人がいないから。
でも…………何でだろう。
一瞬だけあの人の顔が頭に浮かんでしまった。
あのとき助けてくれて、屋上でも偶然会った、蘇芳遥輝………。
もしかしたら、運良く助けてくれるんじゃないかって期待してしまう。
そんな偶然、もうないのに。
だから、自分で何とかしないといけない。
自力でこの場から逃げないと。