血も涙もない。
人間は皆、遠吠えをしている。
 自分より強い動物がいなくなってしまったので、同じ人間同士で、へっぴり腰で威嚇しあうだけしか脳がなくなってしまった。
 本当は臆病なくせに、相手を威嚇する。威嚇して、威嚇して、威嚇して、そしてついには殺し合う。そのために、人間はたくさんの武器を作った。
 戦争という名前の殺し合いは、たくさんの人間と、もっとたくさんの武器で構成されている。進んだ武器を使えば使うほど、人間の身体を剣で刺した時のあのぬるっとした柔らかい感触を味わわなくてすむので、人間はますます殺し合う。遠くで、コーヒーでも飲みながら釦を押すだけで、何万人もの人が殺せる。自分の殺した死体は目の前にない。だから、まるでプレステでもしているような気分になる。次第に、殺すことが快感になってきたら、もうおしまいだ。お互い、殺すしかない。
 僕たちは、野蛮人である。
太陽は、頭近くに登ろうとしている。そろそろお昼の時間らしい。
 僕は空腹を覚える。
 よく考えると、朝から何も食べていない。どのくらい眠っていたのかよく分からないが、もう随分長いこと食べていない気がする。
 とりあえず、僕は食を求めて歩き回ることにした。
 この島のどこかに、ハンバーグでも落ちていたらいいのに。
 デミグラスソースもつけてくれたら、最高だ。

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