血も涙もない。
僕は、この前の晩に見たテレビを思い出そうとした。
無表情な顔をしたニュースキャスターが、戦死者数と被害の大きさを、いつもと同じような声で告げていた。「じゃあ、現地からの中継です」と言うと映像が切り替わって、チカチカする爆撃機と、逃げまとう人々の声が聞こえていた。地面は灰色で、砂埃が待っていて、迷彩柄の戦闘服を着た兵士が、銃を持って走っていた。時折、爆音がする。「人々の多く住む都心部に向けて、軍は侵攻中です」と、すぐに映像はもとに戻って、ニュースキャスターが繰り返していた。
 背中に当たる岩が気持ちいい。よれよれのパジャマ越しに、ひんやりとした快感は十分に伝わってくる。 
 急に眠気が襲ってきて、僕は瞳を閉じたまま、夢の世界に意識を馳せた。体が下に下に沈み込んで、僕は夢に落ちていく…………落ちていく…………
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