【完】溺愛フラグが立ちました。
ああ、きっと、スマホの中の私の王子様にニヤけていたのを見られてしまったんだ……!
お恥ずかしい。
「あんなに明るそうに見えた貴女にも、そんな事情があったんですね」
(私が、明るそうに見えた……?)
「それはきっと、推(お)しに癒やされていたからに違いないです」
『推し』は、ゲームに出てくる個性豊かなイケメンの中でも特に好きなメンバー(=推している)のこと。
「喜ばしいと同時に……嫉妬してしまいそうだ」
――え?
「いま、なんて……」
「ちなみに知冬さんはどういった職業を目指されているのですか?」
(さっきのはなんだったの??)
「その……イラストレーターを、目指してました」
「なるほど。絵を描かれているのですね」
「はい。だけど絵の上手い人って世の中に私が思うよりたくさんいて、才能ある人はどんどん拾われてくんですよね。私は自分を売り込むことも、誰かの目にとまることもできませんでした」