その手が離せなくて
「しっかりしてる様に見えて、案外抜けてるからね~望月は」

「考え事してたんですよ。先輩もよくデスクに座りながら天井見て固まってるじゃないですか」

「――よく見てるわね」


まさか、自分でもあんな事になるなんて驚きだった。

でも、あの時は無我夢中で走っていたし、頭の中もグチャグチャで正常に物事を考えられなかった。

今思い返しても、バカだなって思う。


「見つけてくれた、一ノ瀬さんって人に感謝だね」

「・・・・・・そうですね」


不意に彼の名前が出て、作っていた笑顔が固まる。

それでも、そんな事バレない様に一度深く微笑んで再びキーボードを打ち始める。

視界の端にある、携帯を横目に見ながら。



――――あの日から私達の関係は変わった。

誰にも知られてはいけない関係になった。

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