その手が離せなくて
そっと視線を上げて、どんよりと曇った空を見上げる。

まるで蜘蛛の巣の様に沢山張り巡らされた電線の向こうに見えた景色は、ハッキリしない私の心を映した様に淀んでいた。


『もったいない』

「何が?」

『例の一ノ瀬さんの事』


突然の話の方向転換に、一瞬頭が付いて行かなかった。

相変わらず、萌と話ていると話題がコロコロと変わる。

それでも、彼の名前を聞いた瞬間、小さく心臓が跳ねた。

どこか甘い痛みと共に。


「うん・・・・・・。でも、私彼氏いるし」

『――ねぇ。本当に好きなの?』

「え?」

『晶の事。少なからず、私は幸せそうには見えないよ』


オブラートに包む事なく、真っ直ぐに告げたらた言葉に口を閉ざす。

モヤモヤと心の奥にあった私の気持ちを、見透かされた様な気がしたから。


「5年も付き合ってたら、今更そんな風にもなれないよ。一緒にいるのが当たり前。みたいな」

『言い訳。それは言い訳だよ柚葉。ちゃんと好きって気持ちあるの?』

「――ある。・・・・・・と思う」


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