その手が離せなくて

崩壊

ポタリ。


無意識に落ちたのは、何粒目かも分からない涙。

そっと重たい瞼を閉じると、ポタポタと音がしそうなほど涙が零れた。


体が鉛の様に重たい。

思考が全く機能していない。

ただただ、涙だけがポタポタと頬を濡らしていた。


視線を窓の外に向ければ、空が薄っすらと明るくなりだしてきていた。

朝靄が覆う空は綺麗なはずなのに、心が全く動かない。


私の時間は止まっているのに、世界は動き続けているんだと、そんな事を思う。

息をする度に、私の何かが剥がれ落ちていくというに――。


「一ノ瀬・・・・・・さん」


会いたいと思う。

壊れてしまうほど、会いたいと。


これから失っていくものよりも、彼を失う悲しみの方が遥かに大きかった。

それほど、自分は彼を好きだと知る。


――ううん。

愛していた、と知った。


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