クールな公爵様のゆゆしき恋情2
どうしてヘルミーネ様が? 同行する予定は無かったはずだけど……。

戸惑っているとアレクセイ様の声がした。

「案内役は他の者だったはずだが?」

どうやらアレクセイ様にとってもヘルミーネ様の行動は予想外らしい。

怪訝な様子のアレクセイ様に、ヘルミーネ様は堂々と答える。

「父の命令ですわ。ラウラ様が同行されるのだから、案内役は女性のほうがいいだろうと……ラウラ様、よろしくお願いしますね」

ヘルミーネ様はアレクセイ様の返事を聞くより早く、私に視線を向けて言う。

「お気遣いありがとう。こちらこそよろしくお願いいたします」

「はい。お任せください」

ヘルミーネ様はそう言うと、私からアレクセイ様に視線を移し、これから行く採掘場の方向を始める。

私の方にはもう目を向けない。

リードルフについてそれなりに勉強はして来たけど、ヘルミーネ様の言うことは私の知らないことばかりだ。

知らない用語が多発するし、出て来る人物の名前も初めて聞くものばかりで、話に入る余地がない。

かといって、ヘルミーネ様の方から私を話に入れるために噛み砕いて説明してくれる気配はない。

初めはなんとか会話に入ろうとしたけれど、段々と疎外感を覚え諦めに近い気持ちになった私は溜息を吐きながら窓の外に目を向ける。

赤茶けた山々、立ち上る白煙。段々と見慣れて来たリードルフの景色が流れて行く。

どれくらいそうしていたのか、「ラウラ」とアレクセイ様に呼びかけられた。

「はい」

アレクセイ様へ視線を向ける。鉱山の話についてはもう終ったのだろうか。

「丁度良い機会だから、ヘルミーネにリンブルグの件を伝えたらどうだ?」

「あ……そうですね」

私は困惑しながら、相槌を打つ。

と言っても、ヘルミーネ様にどんな風に説明するのか考えが纏まっていないので、急ぎ考えを纏める。
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