クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「畏まりました。ですが、御用があればいつでもお申し付けくださいませ」

「ああ」

その相槌を最後に、扉の向こう側は沈黙が広がっていく。

聞こえてくるのは微かな衣擦れの音だけで、今何が起きているのか、私には知る術がない。

ふたりで何をしているの?……焦燥感がこみ上げる。
この扉を開けて出て行ってしまおうか。だけど、扉を開けて現実を知るのが怖い。

そんな風に迷っている内に「失礼致します」と漸くヘルミーネ様の少しかすれた声が聞こえて来た。

同時に、ゆっくりとこちらに近付いて来る足音。

私は、出て行こうとしていたことなど忘れたように、身を翻して扉の前からベッドに逃げ戻り、急ぎ上掛けを被る。

アレクセイ様とヘルミーネ様との会話は私にとってあまりにも衝撃的だった。

まだ、理解が出来ていない。
頭が混乱してしまって、直ぐにアレクセイ様と向き合うことが怖くなったのだ。

いまだに忙しなく脈打つ胸を押さえ横たわっていると、寝室の扉が開き、アレクセイ様が中に入って来る気配がする。

ぎゅっと目を瞑って眠ったふりをする私に、ベッド脇まで近づいて来たアレクセイ様が手を伸ばして来た。

そっと優しく髪をなでられる。

ビクリとしてしまいそうになるのを耐えていると、アレクセイ様が囁くように私の名前を呼んだ。

「ラウラ……」

身が竦みそうになる。

もしかして起きているのがばれたの? 
話を盗み聞きしていたことを気付かれた?

緊張で冷たい汗が背中を流れる。

返事をした方がいいのかと迷っているとアレクセイ様の手が離れ、彼自身も部屋から出て行き、私は漸く息を吐いた。
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