クールな公爵様のゆゆしき恋情2
イザークに別れを告げ、アンナと護衛騎士達と共に、リンブルグ孤児院に戻った。

来た時と同じように、ハルトマン院長達の出迎えを受ける。

「公爵夫人、お帰りなさいませ。ご無事のお戻り何よりです」

ハルトマン院長達が恭しく頭を下げる。

「お出迎えありがとう」

「鉱山はいかがでしたか?」

「そのことで話があります。少し長い話になるので、どこか部屋を用意してもらえますか?」

「は、はい……ではこちらに……」

院長達は訝しげな表情を浮かべながら、私を孤児院内部に誘導する。

玄関に入り、しんとした建物内に足音を響かせ、軋む階段を上り、二階の廊下の突き当たりに向かう。

院長室のソファーに落ち着くと、私は早速子供達の事について切り出した。

「ハルトマン院長、採掘場に行って来ましたけど、子供達の労働環境が悪過ぎます。急ぎ改善しなくてはなりません」

私の発言に、ほんの一瞬だけれどハルトマン院長の顔に怒りが見えた。

だけど、院長は直ぐにそれを隠して、にこやかな表情になる。

「これは驚きました。子供達からは特に不満では出ておりませんので……」

不満が出ていないとしたら、それは恐怖から発言できないだけだ。そうさせたのは院長自身なのに、あくまでもしらを切るつもりらしい。

「私が見て感じたことです。あの年齢の子供の労働内容ではないと思います。実際聞いたところ以前よりも労働時間が増えているそうですね。子供の発育にも影響が出る可能性も有りますし直ぐに労働内容の見直し、改善をしてください」

私にしては強い口調で言う。すると院長は溜息を吐き、苛立ちを耐えるようなぎこちない笑い顔になった。
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