紅の葬送曲



「そして、切碕は昔アリスさんの婚約者を殺してる。その婚約者を殺せば、彼女が自分を見ると思ったからだ。現にアリスさんは切碕を見た。憎しみの対象としてな」




向けられるのが愛情ではなく、憎しみだった。





それでも、切碕は彼女に見てもらえるだけでよかったのだろう。






歪んだ愛情かもしれないけど、本当に切碕はアリスさんが好きだったんだと思う。





「でも、理由は分からないが、志摩は呪いを受けている。志摩だけじゃない、俺も詩依も呪いを受けている」




「以前血を吐いたことと体の痣に──」





突然、何か壊れるような音が廊下の方からした。





おまけに……。





「落ち着け、菖!一飛、こいつから江を引き離せ!」




「やってるよ!でも──わっと!」




羽取さんと佐滝さんの声がした。





寿永隊長の方を見ると彼は既に歩き出していて、私は慌ててその後を追いかけた。





ドアを開けて、廊下に出た瞬間──。





「何これ……」




私は廊下の惨状に呆然とした。








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