紅の葬送曲



そんな彼女の体を無慈悲に男の刃が貫く。




「知、せ……と……。敵……は……み、かた……」




誰かに……親友に知らせなければならない。





捜査の最前線にいる親友の為に力になろうとした結果敵に殺されてしまうはめになってしまった。








だが、彼女は己の命よりも親友にこの事を伝えたい。





が、それを男が許すことはなかった。





再び体に凶刃が振り下ろされると、彼女の体は動かなくなってしまった。




「紅……緒……」




最期に光の消えた眼差しで一点を見つめる彼女が呟いたのは親友の名前だった。




「……まったく、これ以上紅緒の周りで人が死ぬと俺まで死なないといけなくなるんだが?せっかく、紅斗と翔鷹に入れたのに……」





男は嫌味を込めた言葉を言うと、パソコンに近付いた。





そして、パソコンに入った己のデータを消した。




「呻き声上げずに死ぬなんて、面白くないな」




男はピクリとも動かない彼女を一瞥すると、スマホを取り出して電話をかける。





「俺だ。官舎の人間を起こして良い。あんたの術は凄いな、誰にも気付かれずに此処まで来れた」





それだけ告げると男は電話を切り、倒れている彼女をじっと見つめる。





「ごめんな、香西さん。これも切碕様復活のためなんだ……」




空虚を見つめる彼女に謝罪するも、男の目には謝意の思いは感じられない。




男の目は嬉々と輝いていた──。





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