紅の葬送曲


「この不器用隊長……」




私はもう一度お腹の辺りを軽く殴ると、彼はますます分からないというように険しい顔をした。





この件に関しては二人の問題だ。





私がとやかく言うべきではない。





それは分かっているけど、遠回しでも言わずにはいられないのは彼には時間が無いからだ。





仲違いしたまま別れるなんて悲しすぎる。





せめて、残された時間くらいは──。





「凌!浅井ちゃん!」




すると、小鳥遊君と紅斗がバタバタと足音を立ててパーティー会場から飛び出してきた。





「何だ、騒々しい」




「凌、スマホ切ってるでしょ!?緊急の連絡がつかないって広瀬さん怒ってたよ!?」





寿永隊長はポケットからスマホを取り出すと、げっ……というような顔をする。





「電源切ってるって言う以前に、充電が切れてた……。こいつも買い時だな」




「スマホのせいにするな!じゃなくて!今すぐ翔鷹に戻るぞ!」




「は?」




小鳥遊君の言葉に、寿永隊長は眉をひそめる。






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